歯ぎしりは、寝ている間などに上下の歯を擦り合わせる現象です。ギリギリと音を立てることが多く、家族などから指摘されて気がつく人も多いです。
そして、食いしばりは、無意識に上下の歯をぐっと噛み締めてしまう癖のことを指します。
歯ぎしりや食いしばりは、歯や顎に強い負荷がかかります。そのため、歯や顎、そして時には全身にも悪影響を与えます。
今回は、歯ぎしり・食いしばりの原因、対処法について詳しく解説していきます。
目次
こんな症状がある方は歯ぎしり・食いしばりに注意!
歯ぎしりや食いしばりは、無意識にしていることの多い癖です。家族から指摘されて初めて睡眠中の歯ぎしりに気づくこともあるでしょう。キリキリと音が鳴っている場合には、家族が気づくこともありますが、音が鳴らないタイプの歯ぎしり・食いしばりもあります。
次のような症状がある場合には、歯ぎしりや食いしばりをしている可能性が高いです。
セルフチェックをしてみましょう。
- 朝起きると顎が疲れている
- 朝起きると顎やこめかみが痛い
- 歯が擦り減っている
- 歯の根本が削れている
- 詰め物がよく外れる
- 上顎の中央部分や下顎の内側や外側に骨が膨らんだ部分がある
- 頬の内側に白い線が入っている
- 舌が側面にでこぼことした歯型がついている
- 原因不明の肩こりや首の痛み、頭痛がある
自分自身では判断が難しいものもあるかもしれません。
歯科医院の定期検診では、歯ぎしり・食いしばりの有無もチェックしています。
歯ぎしりや食いしばりがあるか気になる場合には、一度歯科医院で診てもらうのがおすすめです。
歯ぎしり・食いしばりの原因は何?
歯ぎしり・食いしばりの原因は、はっきりと断定できるものではありません。いくつかの原因が重なっていることもあります。考えられる原因を挙げていきます。
ストレス
歯が噛み合う刺激は、脳のストレスを緩和すると言われています。
ストレスを感じている時は、無意識のうちに歯ぎしりや食いしばりが多くなります。
例えば、集中して作業をしている時や、運転中に交通渋滞にあってしまった時、無意識のうちに歯を食いしばっているかもしれません。
噛み合わせ
噛み合わせが合っていないと、歯や顎に偏った負担がかかり、歯ぎしりや食いしばりの原因になることがあります。
上下の歯を噛み合わせた時に、どこかの歯が強く当たっている場合や、被せ物や詰め物の高さが合っていない場合に起こります。
癖や習慣
スポーツをする時や集中する時に歯を食いしばることが癖になっていることがあります。
このような癖がある場合や、睡眠中も歯ぎしりや食いしばりをしている可能性が高いです。
睡眠障害や睡眠時の環境
睡眠時無呼吸症候群がある場合や、眠りが浅いなど睡眠障害がある方は、歯ぎしりや食いしばりを起こしやすくなります。寝る前のアルコールやカフェインの摂取も浅い眠りになるので、注意が必要です。
また、合わない枕を利用している場合も歯ぎしり・食いしばりを起こしやすくなります。
特に高い枕は、顎を引いた状態になるため、気管が狭くなり、首や肩に負担がかかるためストレスを感じやすく、歯ぎしりや食いしばりを誘発しやすくなります。
顎関節の擦り減り
加齢などにより、顎関節が摩耗して噛み合わせのバランスが悪くなると、歯ぎしりを引き起こすことがあります。
歯の生え替わりによるもの
乳歯が生え揃う前のタイミングや、乳歯から永久歯に生え替わる時には、一時的に歯ぎしりをすることがあります。
これは、噛み合わせがまだ完成されておらず、顎の位置が定まっていないための起こる
ものです。歯が大きく欠けたり割れたりしなければ、問題ありません。
歯が生え揃うのを待ちましょう。
歯ぎしり・食いしばりが引き起こす悪影響
歯ぎしりや食いしばりを単なる「癖」と認識している人もいるでしょう。しかし、歯ぎしりや食いしばりは歯や顎に大きな負担がある行為です。男女平均して70キロほどの力がかかり、男性では最大100キロもの力が加わると言われています。
放置すると、歯や顎、そして全身のトラブルを引き起こすことがあるので注意が必要です。
歯ぎしり・食いしばりが引き起こす悪影響を解説していきます。
歯の破折
歯の表面のエナメル質はダイヤモンドよりも硬いと言われている組織です。
ところが、歯ぎしりや食いしばりにより、強い負荷が加わり続けると、割れてしまうことがあります。
特に神経を抜いた歯は、そうでない歯と比べて脆いため、歯ぎしりや食いしばりで破折してしまうリスクが高いです。
歯の根っこが割れてしまった場合には、抜歯せざるを得ないことも多いです。
歯の擦り減り・知覚過敏
歯ぎしりや食いしばりがあると、歯の噛み合う面が擦り減ったり、歯の根本が削れてきてしまいます。神経がある歯の場合は、擦り減りにより象牙質が露出すると、歯がしみる「知覚過敏」という症状を引き起こしやすくなります。
歯周病の悪化
歯ぎしりや食いしばりで歯に大きな力が加わると、歯を支える歯周組織がダメージを受け、歯周病が悪化しやすくなります。
顎関節症
歯ぎしり・食いしばりにより顎に強い負荷がかかると、顎関節に痛みが出るなど、顎関節症を引き起こすことがあります。
頭痛や首・肩のこり
歯ぎしり・食いしばりによる力は、顎の筋肉だけでなく、周囲のつながった筋肉にも影響します。続けていると、顎・首・肩・側頭部の筋肉疲労が続き、頭痛や首・肩のこりなどを引き起こします。
歯ぎしり・食いしばりの対処法
歯ぎしり・食いしばりにはいくつかの原因があります。複数の原因が重なり合っていることもあります。原因によって対処法は異なってきますが、次のような対処法を組み合わせて行われることが多いです。
自己暗示療法
歯ぎしり・食いしばりの対策は、まずは自覚することです。日中の食いしばりは、意識すれば自分で気づきます。気がついた時に、顎の力を抜いて上下の歯を離すようにしてみましょう。また何かに集中している時は、食いしばりをしやすいので、食いしばらないように自己暗示をかけるようにするのもポイントです。
ナイトガード
スプリント、マウスピースとも言われます。
睡眠時は、歯ぎしりや食いしばりを自分でコントロールすることができません。
ナイトガードを装着して、歯ぎしり・食いしばりによってかかる力を分散させるようにして、歯や顎を守ります。
ナイトガードは、歯科医院で、保険適用内で作ることができます。
市販されているものもありますが、一人一人に合った形態になっていないため、十分な効果を発揮しないこともありますので、できれば自分専用のものを歯科医院で作製した方が良いでしょう。
噛み合わせの治療
噛み合わせに不具合がある場合には、噛み合わせの調整を行います。
被せ物や詰め物の高さを治す場合には、削って微調整を行います。
根本的に、噛み合わせに大きな歪みがある場合には、矯正治療が必要になることがあります。矯正治療で正しい噛み合わせになると、歯ぎしりや食いしばりのリスクが減らせます。整った歯並び・正しい噛み合わせは、虫歯や歯周病のリスクも減らし、お口の健康を保ちやすくなります。
睡眠環境の改善
睡眠中の歯ぎしりや食いしばりは、睡眠時の環境が関係していることがあります。
寝る前のアルコールやカフェインはできるだけ避け、自分に合った高さの枕を利用するのが良いでしょう。
睡眠時無呼吸症候群や精神的な影響などによる睡眠障害がある場合には、対応の診療科を受診して、改善していくのが良いでしょう。睡眠の改善は、全身の健康にも繋がります。
ストレスの発散
原因となっているストレスをコントロールすることもポイントです。
できるだけストレスを溜め込まないよう、趣味やスポーツなど、発散方法を見つけられると良いでしょう。
まとめ
歯ぎしりや食いしばりは、とても強い力で行われています。そのため放置すると、歯や顎・全身に悪影響が起こる可能性があります。
無意識下で行われることが多いですが、日中の食いしばりは自分で意識して改善することも可能です。
歯科医院では、歯ぎしりや食いしばりから歯を守るためのナイトガードの作製や、噛み合わせの治療を行なっています。
歯科医院の定期検診では、歯ぎしりや食いしばりのチェックも行なっています。歯ぎしりや食いしばりがある場合には、早めに改善していけるようにしましょう。