インプラントを成功させるために大切な術前CT検査について詳しく解説!

インプラントイメージ

歯を失った場合の治療方法の一つに「インプラント治療」があります。

インプラントは、顎の骨に人工歯根を埋め込むことで、自分の歯のように使用することができる治療法です。

日本でインプラント治療が始まったのは、1990年頃からで比較的新しい治療法ではありますが、今ではとてもメジャーな治療法で、治療を希望する方が増えています。

インプラント治療をするからには、「治療が成功して欲しい。」と皆が思うことでしょう。

インプラント治療では、術前の検査を行い、患者様の状態を正確に把握することが必要不可欠です。

今回は、インプラント治療成功の鍵となる、術前の検査、主にCT検査について詳しく解説していきます。

インプラント治療の術前検査の項目

インプラントについて説明している女性

インプラントを希望する場合には、術前検査を行います。

もちろん術前検査をして、治療計画を実際に聞いてから、施術を受けるか決めても問題ありません。(施術を希望しない場合でも、検査費用のみかかることが多いです。)

術前検査の項目は次の通りです。

問診

年齢や健康状態、生活習慣などを細かく聞いていきます。

持病がある場合や喫煙がある場合、インプラント治療を受けられないこともあるためです。

インプラントは外科手術のため、がん、心筋梗塞、出血しやすい病気、自己免疫疾患、ビタミンD欠乏症、骨粗鬆症、糖尿病などがあると、基本的には受けられません。

内科主治医との連携により、状態が落ち着いていて、インプラント手術を受けても問題ないと判断されれば、手術を受けられる場合もあります。

口腔内検査

虫歯や歯周病の有無、噛み合わせなどを確認します。

虫歯や歯周病がある場合には、それらの治療をしてからインプラント治療をするのが理想的です。

特に歯周病がある場合は、お口の中に歯周病菌が増殖している状態です。インプラントを入れても、インプラントがインプラント周囲炎にかかるリスクが高くなります。

基本的には、歯周病の治療をしてから、インプラント治療を行います。

レントゲン撮影

顎の骨の状態を確認する検査です。インプラントを埋入するのに十分な骨の量があるのか、おおよその状態を知ることができます。

レントゲン写真は、2D(二次元)的な情報になります。立体的な情報が必要な場合には、これだけでは不十分になります。

CT撮影

通常のレントゲンでは撮影できない詳細なデータを取得するために行われます。

骨の状態を様々な角度から調べ、骨の形や量を立体的に把握することができます。

歯科用CTとは

歯科用CT(Computed Tomography)とは、カメラが円錐状に移動しながらX線を照射し、あらゆる方向から口腔内や口腔周辺を撮影する装置です。

歯科用CTは、インプラント治療以外にも、歯周病進行度のチェックや、親知らずの抜歯に関わる診断、顎関節症の診断など、様々な治療で幅広く活用されています。

医科用のCTは、寝台に横になって撮影するのに対し、歯科用CTは立った状態または、座った状態で撮影を行います。歯科用CTは被曝量も非常に少なく、患者さんへの負担が少ない検査機器です。

インプラントをする時にCTは必要?

インプラントCT画像イメージ

インプラントする場合、CTを撮る決まりはありません。

しかしインプラント治療を安全、かつ確実に行うためには、CTは必要不可欠です。

インプラント治療では、歯ぐきの中の顎骨に穴を開けてインプラント体を埋入していきます。

インプラント治療の成功には、インプラントの埋入位置を確実に決めることが重要です。

CT撮影で、骨の形や厚み、神経や血管の位置を正確に把握することで、綿密な治療計画を立てることができます。

検査を省略してしまうと、事前に予測可能だったリスクが見逃され、後々トラブルが発生することがあります。

CT検査でわかること

CTは、3次元の画像にして、立体的に骨や血管、神経の状態を確認することができます。

顎の骨の状態

CT検査では、顎の骨の量、厚みや高さ、形状、骨密度などを正確に把握することができます。インプラントは顎骨に人工歯根を埋め込む治療法です。顎の骨の厚みや骨量を正確に把握することで、確実な治療を行うことができるようになります。

CT検査により、骨の量が足りないことが事前にわかると、骨を増やすための骨造成法を行ってからインプラント埋入手術を行います。

血管や神経の走行位置

CT検査では、血管や神経の走行位置も正確に把握することができます。

インプラントを埋入する位置によっては、血管や神経の走行に影響することがあります。血管や神経を傷つけることなく、インプラントを埋め込むためには、事前に走行位置を正確に把握しておく必要があります。

CTを撮らないことで起こりえるリスク

インプラント治療では「CTを撮らなければいけない」と決まっているわけではありません。CTを撮影せずに手術を行う歯科医院もあるでしょう。

しかし、CTを撮らないことで起こりえるリスクがあります。決して頻度が多いわけではありませんが、知っておきましょう。

噛み合わせが悪くなる

インプラントの埋入位置が不適切だと、噛み合わせに不具合が出ることがあります。

食事をうまく噛めないなどの支障が出てきます。

左右のバランスが悪いなどの不具合が出ると、どこか一部の歯にばかり大きな負荷がかかり、歯を傷めてしまうことにもなりかねません。肩こりや頭痛など、歯以外の部位に不具合が出てくることもあります。

また、噛み合わせの歪みにより、顎に負荷がかかると、顎関節症になるリスクが高くなります。

上顎洞へのインプラントの迷入

上顎の上方には、上顎洞という空洞があります。

上顎洞までの骨が薄いにも関わらず、インプラント体を深く埋入すると、インプラント体が上顎洞に迷入してしまうことがあります。

そのままでは上顎洞に炎症が起きるので、迷入したインプラントを取り除く必要があります。

神経の損傷

インプラントが適切な位置に埋め込まれないことで、走行している神経を傷つけてしまう恐れがあります。特に下顎の奥歯は、下歯槽神経、オトガイ神経、舌神経など多くの神経が走行しているので注意しなくてはなりません。

神経を損傷してしまうと、神経麻痺が残るなどのトラブルが発生することがあります。

血管の損傷

インプラントが適切な位置に埋め込まれないと、走行している大きな血管に触れ、血管を損傷してしまうことがあります。術中の大量出血などのトラブルが発生する可能性があります。

まとめ

インプラント治療を成功させるためには、精密な治療計画を元に、適切な位置に正しくインプラントを埋入することが大切です。

術前のCT撮影では、インプラント手術の計画に必要な顎骨の状態や、血管や神経の走行位置を正確に把握することができます。

これにより適切な位置にインプラントを埋入することができるようになり、インプラント治療で起こりえるトラブルを回避し、治療の成功につなげることができます。

インプラント治療を希望する場合には、術前検査でCT撮影を行なっている歯科医院を選ぶと安心です。治療を行う歯科医院にCT機器が無い場合でも、別の病院で撮影だけ行っていることもありますので、歯科医院に確認してみましょう。