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インプラントで「きちんと噛めること」介護期までを見据えた治療

インプラントで「きちんと噛めること」介護期までを見据えた治療

まず歯科治療の基本である「正しく噛めること」そして楽しく食事ができること、をテーマに治療計画を立てました。奥歯が先に失われて深くなった噛み合わせの不具合から、自然歯の割れ、メタルボンドで過去治療した歯の劣化、歯周病の進行と複合的な問題を抱えてお悩みでした。将来90歳、そして100歳を見据えた人生を考えインプラントを利用した清潔で扱い易い「入れ歯」への移行も視野にいれました。

治療終了までの流れ

1.初回ご来院時

初回ご来院時

G.A. さんの最も大きな問題は「噛み合わせが乱れている」こと。そのために、他の歯やお口全体に悪影響をもたらしていました。ご本人もお悩みで話をしたり、食事をしたりすることも苦労される事もあったそうです。

噛み合わせが乱れると、余計な力が加わり場合によっては「てこの原理」のように大きな力が反対側の歯に加わります。また歯ぎしりなど無意識に歯や顎を痛めていってしまう、そして健康な歯もすり減ったり、割れてしまったりします。G.A. さんの場合は金属で裏打ちされた歯(メタルボンド)でさえ、地金が見えてしまうほどの力が永続的に加わるほどの悪い噛み合わせ状態でした。

2. 精密な検査と診断による
治療計画

精密な検査と診断による

CT を含めた検査の後、治療計画をお話ししました。まず現時点では極端に深くなってしまい、歯や顎にまで悪影響を及ぼしている噛み合わせの治療に重点をおくこと。そのうえで、咀嚼機能の改善を最大の目的として、インプラント治療を行うことを提案しました。

歯周病と加齢によって歯肉も骨も痩せていましたが、東海林歯科のインプラント技術で安全に手術をできると判断し「単純な見た目より、まず正しく噛めること」を目標とした治療計画をスタートしました。


一方で年齢を考えると、一過性の改善ではなく将来にわたって快適なお口を保つことができるよう、現時点ではインプラントと白い歯(上部構造物)としますが、例えば介護となった場合にそなえてインプラントを用いた「入れ歯」に容易に意向できるようインプラント体の挿入位置を決定しました。

3.咬合器による徹底した検証と
治療計画の実際

咬合器による徹底した検証と治療計画の実際

CT スキャンデータによる 3D シュミレーションは肉眼で見えない筋肉、神経、骨の状態を確認できるため有効で、特にインプラントの挿入は欠かすことができません。
一方で模型(歯形)と咬合器による治療計画の策定は全ての治療の基本です。決して 三次元CG に置き換わるものではありません。一長一短がありお互いを補い合うものです。
この「お口の裏側」から見た状態では、上の歯が下の歯に覆い被さり噛み合わせが乱れていることが良く分かると思います。

今回は特に咬合器と模型の重要性がわかりやすい症例なので、詳しくお話します。咀嚼がしやすい噛み合わせる歯の形(咬合面形態)をワックスで再現します。上下の歯がスイートスポットで接触する様に模型で徹底して検証します。

咬合器による徹底した検証と治療計画の実際

初診時に作成した歯形(口腔内模型)を咬合器にセットします。これは現在の患者さんのお口の中を正確に写し取ったものです。

上の歯が深く下の歯に「覆い被さっている」ことがわかるでしょうか?支えるべき奥歯がないために噛み合わせが狂ってしまい、残りの歯を更に痛めていました。

咬合器による徹底した検証と治療計画の実際

作成した模型に治療計画に基づいて、できるだけ理想的な噛み合わせをワックス(写真のグレーの部分)を用いて作成します。噛み合わせの要素には、噛み合わせの水平(咬合平面といいます)、噛み合わせの高さ(垂直顎間距離といいます)など、沢山の要因があるのですが、特に水平のバランスが大切です。

咬合器による徹底した検証と治療計画の実際

G.A. さんの噛み合わせが乱れた最大の要因は、下あごの奥歯(臼歯)が失われてしまったため、上のあごが落ちてしまいその結果、噛み合わせの高さが低く乱れたことが、深い噛み合わせ(ディープバイト)を招いていました。

咬合器による徹底した検証と治療計画の実際

噛み合わせの水平(咬合平面)を取るために、神経が残っている上顎大臼歯を可能の範囲で理想的に削るプランをたてました。写真の赤いラインのところです。また上あごで特に奥に入り込んでいる歯があるので、これはベニアを併用することで改善します。

4.無痛治療(静脈内鎮静法)による
インプラントの挿入

無痛治療(静脈内鎮静法)によるインプラントの挿入

CT データを元にした 3D シュミレーションを行い、特に痩せていた顎の骨を影響を考慮し、インプラント体の選定と挿入の深さと角度については特に慎重な治療を行いました。

インプラント治療では、東海林歯科の特徴である無痛インプラント「静脈内鎮静法」という麻酔法を用いて治療をおこないました。G.A. さんにも術中、術後の痛みケアについては、高い満足を頂くことができました。


歯肉の痩せが大きいことから、治療直後はインプラント体が一部露出しているところもありますが、噛む力を安定的に受け止められること、噛み合わせを最大限改善し楽しく食事して頂けることを最優先しました。

5.セラミックによる白い歯(上部構造物)を載せて治療の終了

セラミックによる白い歯(上部構造物)を載せて治療の終了

先に模型で見て頂いたとおり、G.A. さんの最大の課題である「噛み合わせの改善」に向け、東海林歯科の技工技術を全て注ぎました。正しく噛めること、食事をできることは活き活きと生活する人生の基本だと考えています。

治療位置によって用いた歯(技工物)は異なります、機能的な噛み合わせと習慣としてのクセなど、G.A. さんの特徴を考慮して製作しました。同時に年齢も鑑みてあまり「白くなりすぎない」自然な色になるよう形や、歯の色についてもお顔立ち全体をイメージして一本ずつ丁寧に製作しました。

6.インプラント治療を終えて

インプラント治療を終えて

お口の全てに悪影響をもたらしていた「噛み合わせを改善」したことで、治療後は歯もちろん顎にも負担がなくなりました。
食べること、喋ることが楽しくなったと仰って頂いたことで、治療に携わった医師、技工士を始めとしたスタッフも喜びを共にしました。




また観察力の鋭い方は、正しい歯と噛み合わせの位置に戻したことで、お口のまわりの筋肉が正しく動くようになり、口元のシワ(法令線)が目立たなくなっていることにお気づきかもしれません。噛み合わせを含めて正しく機能を改善することを目標としましたが、結果として若々しさをお顔全体で得ることができました。もちろんこれも治療計画の一部です。

東海林歯科では、正しく噛めること食べられることを通して、100歳まで長生きし、人生を楽しんで頂ける治療を目指しています。そのため介護が必要になった場合にも容易に今回のインプラントを用いた「入れ歯」に移行できるよう計画・治療しました。

初代院長、そして私、東海林義昭と歯科医院として数え切れないほどの患者さんと接して「その方の人生にとって本当に必用な歯科治療、そしてインプラントとは何か…」が、やっと見えるようになってきた様に感じます。